着物のお話・結城紬 紬というのは、元々売り物にならない汚れ繭のような、屑繭から真綿を作り、糸につむいで手織機で織ったものを言います。 絹織物でありながら、光沢はなく、軽くて暖かく、素朴な味わいを持った織物です。 紬は、いわば繭のリサイクルで、歴史は古く万葉集にもすでに登場しています。 結城紬というと、私は平岩弓枝さんの小説「女の気持ち」を思い出します。平岩弓枝さんの小説にはよく着物の話がでてきますが、 特に紬がお好きで、資料を読むだけではなく、実際に産地を訪れたり、出来上がるまでの工程を見ていらっしゃるんだなと感じます。 そこで、小説「女の気持ち」の中の文章を引用して結城紬を説明したいと思います。 〜筑波嶺(つくはね)の新桑(にひぐは)繭(まよ)の衣(きぬ)はあれど初めて結城紬の実演を見た時、その出来上がるまでの長い工程と、手仕事の緻密さに、とても驚き、そして、どんなに高価であっても、 決して晴れの場には登場しない、普段着・おしゃれ着というのが、少し寂しい感じがしました。が、結城紬を実際に着て感じたのですが、 根気と愛情を込められて作られた紬は、その愛情に応えるかのように、着る人に負担をかけない軽やかさで、暖かくやさしく包みこんでくれるような、 なんとも言えない着心地でした。"晴れの場には登場しない、少し寂しい着物"ではなく、奥ゆかしい素敵な着物なんだと実感しました。 |
結城紬ができるまで 1.真綿かけ 重曹で似た繭を一つ一つ指だ広げ、五〜六枚を重ねて一枚の真綿を作る。 2.糸つむぎ つくしという道具に真綿を巻き付け、手でつむいでおぼけと呼ばれる桶に糸を入れていく。 一反分をつむぐには、二〜三ケ月を要す。 3.管まき おぼけのつむぎ糸を糸車で管(ボビン)に巻く。 4.機延べ 管(ボビン)に巻き取った糸を、櫛に差し、一反分の長さと本数に整える。 5.図案・墨付け 特殊な方眼用紙に描かれた図案通りに、絣柄となるところに、墨で印を付ける。 6.絣括り 絣の柄となる部分(墨つけした所)に染料が染み込まないように木綿糸でしばります。 7.たたき染め 結城紬独特の染技法で、絣括りされた糸を棒の先にしばり、台にたたきつけて染み込ませる。 8.糊つけ 染め上がった糸に強い糊をつけて糸を保護する。 9.筬通し つむぎ糸を機織り機に載せるための作業。筬はくし状になっていて六八〇の目の間に、たて糸を二本ずつ差込む。 10.地機(じばた) 1500年もの間使われてきた最も原始的な機織り機。たて糸の張り具合を、腰の力で調節するため、 手つむぎ糸の弾力あるやわらかさを残した結城紬独特の風合いを作り出す。 11.糊抜き 紬を着物に仕立てる前に、最後の工程である湯通しをする。織る前につけた糊を糸の芯にわずかに残し、独特のやわらかさと風合いをだす。 |